過活動膀胱

過活動膀胱について

過活動膀胱について頻尿、尿漏れ、尿意切迫感(突然起こる激しい尿意)、切迫性尿失禁(尿意切迫感があってトイレに間に合わず漏れてしまう)などの症状を起こす疾患です。日常生活や仕事に支障を生じることも多く、QOL(生活の質)を大幅に低下させます。50歳以上の男女の8人に1人が過活動膀胱の症状を経験し、そのうち半数が切迫性尿失禁を経験しているという調査結果もあります。
泌尿器科で適切な治療を受けることで症状改善や軽減ができる病気です。年齢のせいと諦める前に、こうした症状に気付いたらお気軽にご相談ください。

症状

尿意切迫感

突然激しい尿意を感じ、漏れそうで我慢できない状態です。

頻尿・夜間頻尿

排尿の頻度は個人差がありますが、一般的には日中5~7回、夜間は0回が正常範囲です。これよりも多い場合には頻尿や夜間頻尿が疑われます。

切迫性尿失禁

尿意切迫感があって、トイレまで我慢できずに漏れてしまう状態です。
過活動膀胱の症状を客観的に評価するために、過活動膀胱症状質問票(OABSS)が参考になります。

原因

過活動膀胱には、脳、脊髄などの神経と膀胱や尿道を結ぶ神経に障害があって起こる神経因性過活動膀胱と、それ以外の非神経因性過活動膀胱があります。

神経因性過活動膀胱

神経因性過活動膀胱脳、脊髄など膀胱や尿道を結ぶ神経回路に障害があって、膀胱や尿道のコントロールがうまくできない状態です。脳梗塞、脳出血、パーキンソン病、認知症などの脳神経障害によって生じているケースと、脊柱管狭窄症や脊髄損傷といった脊髄の神経障害が原因で生じるケースに分けられます。

非神経因性過活動膀胱

非神経因性過活動膀胱男性では下部尿路閉塞、女性では骨盤底筋群のダメージなどによって起こることが多くなっています。また、加齢による筋力の低下などによって生じることもあります。中には原因がわからない突発性の過活動膀胱もあります。

診断

診断血液検査やCT検査などによる画像検査では診断ができないため、問診が特に重要です。症状の内容、起こりはじめた時期、症状の変化、症状を起こすきっかけ、お悩みの点、他の疾患の有無やその内容、服用されている薬などについて、問診で丁寧にうかがっていきます。
下記のOABSS(過活動膀胱症状質問票)や、排尿について記録いただく排尿日誌を参考に症状や状態を把握して診断します。
過活動膀胱で頻尿がある場合、尿を出し切れずに常に残尿が膀胱にあるケースがあります。残尿が常にあると膀胱炎や腎機能障害を起こすリスクとなります。残尿の量は超音波検査でも簡易的に調べることができますので、頻尿や残尿感などの症状がある場合にはお気軽にご相談ください。

過活動膀胱症状質問票(OABSS)

朝起きた時から夜寝るまでに、何回くらい尿をしましたか?

7回以下 0点
8~14回 1点
15回以上 2点

夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか?

0回 0点
1回 1点
2回 2点
3回以上 3点

急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか?

なし 0点
週に1回より少ない 1点
週に1回以上 2点
1日1回くらい 3点
1日2~4回 4点
1日5回以上 5点

急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか?

なし 0点
週に1回より少ない 1点
週に1回以上 2点
1日1回くらい 3点
1日2~4回 4点
1日5回以上 5点

過活動膀胱の診断基準

  • 質問3(尿意切迫スコア)が2点以上、かつOABSS合計スコアが3点以上

過活動膀胱の重症度判定

OABSS合計スコア

軽症 5点以下
中等症 6~11点
重症 12点以上

治療

生活習慣の改善

過剰な水分摂取を控え、利尿作用のあるカフェインやアルコールの摂取を制限することで症状改善が期待できることもあります。また、外出の際にはトイレの位置を確認しておき、早めにトイレに行くことも尿失禁を防ぐためには有効です。

膀胱訓練

トイレにすぐ行ける環境下でおしっこを我慢し、膀胱の容量を少しずつ増やすトレーニングです。膀胱炎など尿路感染症になりやすい方には向きませんので、医師と相談して行うようにしてください。

骨盤底筋体操

筋力が低下した骨盤底筋群を鍛えるトレーニングです。腹圧性尿失禁の改善のために行われてきたトレーニングですが、過活動膀胱の場合も効果が期待できます。筋肉を強化できるまでにある程度時間がかかりますが、長く続けることで高い効果を期待できます。また、進行予防や再発予防にも有効です。

薬物療法

膀胱の収縮を抑制する抗コリン薬やβ3受容体作動薬などで症状改善に導きます。投薬方法や効果の出方、現れる可能性のある副作用が異なる薬が複数ありますので、患者さんの状態や体質、ライフスタイルなどにきめ細かく合わせた処方を行います。

ボツリヌス毒素膀胱壁注入療法

2020年4月に保険適用された最新の治療で、入院の必要なく外来で受けられる治療法で当院でも導入しております。
薬物療法やトレーニングなどの運動療法、生活習慣の改善などを3か月以上続けても十分な効果を得られない場合は、難治性過活動膀胱と診断されます。難治性過活動膀胱に有効な治療法に、ボツリヌス毒素膀胱壁注入療法があります。ボツリヌス毒素を膀胱内壁に注射することで膀胱内の筋肉の収縮作用が弱まり、過活動膀胱の症状改善が期待できます。治療効果は、施術後2~3日程度現れます。個人差がありますが、効果は4~8ヶ月持続します。3ヶ月経過していれば、再投与が可能です。
国内の臨床結果では、初回投与後6週の時点で1日あたりの尿失禁回数が3.64回減少、27%の方で尿失禁が完全に消失、60%の方で尿失禁の回数が半分以上消失になったと報告されています。難治性の過活動膀胱でお悩みの方はぜひ相談ください。

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